大阪地方裁判所 昭和53年(タ)176号 判決
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【判旨】 一被告は、まず、本案前の抗弁として、原告の妻であつたトミエはすでに死亡して原告との夫婦関係が終了し、原告の戸籍からも除籍されていること、トミエは何らの資産も有していなかつたので相続等の問題が生じないこと、及びトミエは被告を自分の生んだ長男として届出し、同人を愛して養育して来たのであり、現在に至つてトミエと被告との親子関係を否定することは同女の意思に反することを理由に、原告においてトミエと被告との間に親子関係が存在しないことの確認を求める利益はないと主張する。
しかし、本訴は、原告が原告及びその亡妻トミエと被告との間に嫡出親子関係が存在しないことの確認を求めるものであるところ、嫡出親子関係は、父母が法律上の婚姻関係にある夫婦であることに基き、この夫婦とその間に出生した子との間に成立する親子関係であつて、父母のいずれか一方を欠いても成立せず、また父子関係と母子関係のいずれか一方のみが嫡出親子関係であり他方は非嫡出親子関係であるというようなことはあり得ないのであるから、嫡出親子関係の存否は、父母とその子との三者間において合一に確定すべきものである。従つて、嫡出親子関係確認の訴は、法律上の夫婦である父母と子とが共に生存する場合には右三者を当事者とする必要的共同訴訟とされ(大審院昭和一九年六月二八日判決・民集二三巻四〇一頁)、父母の一方が死亡した後においても、生存する母又は父と子との間で死亡した父又は母をも含む三者間の嫡出親子関係の存否の確認を求めることができる(前掲最高裁判所昭和二五年一二月二八日判決参照)ものとされているのである。そして、嫡出親子関係存否確認の訴はいわゆる確認の訴に属するものと解すべきであるから、原告にその存否の確認を求める利益がなければならないことはいうまでもないけれども、嫡出親子関係は、父母の一方が死亡した後でも、生存する母または父及び子にとつて身分関係の基本となる重要法律関係であり、戸籍の記載が真実と異なる場合には戸籍法第一一六条により確定判決に基づき右記載を訂正して真実の身分関係を明らかにする利益が認められるべきである(最高裁判所昭和四五年七月一五日判決・民集二四巻八六一頁参照)。これを本件についてみるに、公文書であるから真正に成立したものと推定すべき甲第三号証によると被告の戸籍には父として原告が、母としてトミエがそれぞれ記載されていることが認められ、原告及びトミエと被告との間に嫡出親子関係が存在しないとするならば、原告には右戸籍を真実に合致するように訂正するため右三者間に嫡出親子関係の存在しないことの確認を求める利益があるというべきであり、被告主張のような事情があつたとしても、原告の右利益を否定することはできないから、被告の本案前の主張は採用しない。
被告は、仮に被告が原告とトミエとの間の実子でないとしても、原告及びトミエと被告との間には養親子関係があると主張する。
しかしながら、養子縁組は、双方当事者ないし代諾権者の縁組意思の合致のみでは足らず、民法及び戸籍法の定める届出をすることによつてはじめて成立する要式行為であつて、右は強行法規であると解すべきであつて、前記認定の通り、原告とトミエとが、被告をその実父母妻谷夫婦の同意を得て養子として育てる意図の下に貰い受け、これを原とトミエとの間の嫡出子として出生届をし、その後引続き原告夫婦の許で養てきたとしても、右嫡出子としての出生届に養親子関係創設の効力を認めることは出来ないから、被告の右主張を採用することはできない。
(中川臣朗 大串修 河村潤治)